「ストーリーを語る」ということ
GQに良記事を発見!
データからストーリーへ
人間の購買意欲は、視覚や聴覚などに訴える様々な方法でかきたてることができる。そして近年、新たなマーケティング手法として注目されているのが“ストーリー”の活用だ。商品の情報を数値やデータとして見せるのではなく、ストーリーを与えること──一体“ストーリーを与える”とはどういうことなのだろうか。
では、オートミールで説明しよう。細かく表示された成分表を提示されるより、「甘いブルーベリ—とオートミールが食卓に並ぶと、とても心が温まる」というストーリーを聞くほうが、より興味をひかれるのではないだろうか。人間の脳は、数値よりもストーリーの方が情報として処理しやすいのだ。
FAST COMPANYによると、数値とストーリーでは情報を処理する際に使う脳の部分が異なるという。数値を読むと言語を司る部分が働くが、ストーリーを読むと、実際に体験しているかのような錯覚を起こす部分が働く。
米マーケティング企業OneSpotによると、アメリカ人は毎日スクリーンに映しだされる言葉を10万語も目にしているという。それだけの情報を浴びながら(浴びているから?)、調査対象うちの92%の人が数値よりもストーリーを好んでいるという。
購買意欲をかき立てるのは「データ」ではなく「ストーリー」記事
情報過多時代のマーケティングの基本中の基本だ。
モノやサービスには2つの「価値」がある。
- 機能的価値:モノやサービスの「スペック」による価値
- 情緒的(感情的)価値:モノやサービスにより実現される「気分」的価値
日本企業のマーケティングは「機能的価値」を訴求することが高度成長期から続いてきている傾向にある。で,「スペック競争」を勝ち抜くことが「勝つ道」だと思っている人々は今だに多いのではないだろうか。
例えば,携帯電話で一時の流行だった「最小・最軽量」「エリアカバレッジ NO.1」「つながりやすさ NO.1」的な訴求だ。これは訴求する側からすれば簡単だ。ゆえにこのレイヤーでのコミュニケーションが日本のマーケティングの歴史と言っても過言ではない。
一方,情緒的価値とは機能的価値を下支えにした「心理的価値(どんな気分になるのか)」「結果,生活がどうなるのか」のようなターゲットの「共感」を取りに行く手法で,欧米のマーケティングではもともとこちらが主流である。
これを学んだのは,J-PHONEを市場導入する時に当時東京デジタルホンと提携していたアメリカの「Airtouch」という携帯電話キャリアから貰った「ブランド・ポジショニングをどう取るか」という資料とイギリスのキャリア「Orange」のコミュニケーションだった。
携帯電話で取れる「心理的ポジション」はそもそも「4つ」しかなく,当時日本の携帯電話事業者は4社だったので,心理的ポジションは「取ったもの勝ち」状態で,ドコモとIDO(現au)の先行参入者がCMで醸成しているポジションとは,「全く違う」心理的ポジションを取りに行った。それは「Freedom」というものだ。
なので,CMの表現も今までとは全く違い「自由に生きるカッコ良さ」を若年層に訴求した。
「ストーリーを語る」ことは,この情緒的価値を訴求し「共感」を得る手法としては最適だと認識している。
ストーリーに共感していただけるユーザーだけがお客様になっていただればいいと,割り切っている。これも一つのターゲティングだ。
マインドの革新で,自己革新を。